小さな芸能プロダクションに所属する6人の俳優たちは、高度経済成長期に建てられた都内にある大劇場のリハーサル室を兼ねた”楽屋”にいた。国民的大スターが座長を務める大人気舞台シリーズ初日の幕が開いてから早くも三週間が経っている。6人の俳優たちは台詞も無く、出番もワンシーンだけのアンサンブルとして出演しているが、内容の変更も無いことで本番前の時間をのんびりと過ごしていた。
ポスターにもチラシにも名前が載らず「他」と表記される俳優6人が、舞台本番に向けてどのように過ごしているのか。6人は無事にお弁当を食べられるのか。違う人の衣装を着ていないか。トイレは問題なく済ませられたのか。そして、いつも通りの本番を迎えられるのか。やがて定刻で開演ブザーが鳴り響く。