舞台は四方を山に囲まれた「やさしい藩」。
この藩では、八つになると、お殿さまに許されたものは足の筋を斬られ そうでないものは「お花畑」に入ってお殿さまのお役に立つのが慣わしとなっている。
米も野菜も育たない痩せた土地で唯一育つのは、飲むとたちまち勇ましい戦のユメが見られる「ユメミの実」。
おやさしいお殿さまに“守られ” 侍たちは今日も“平和”に「ユメミの実」を育てていた。
この藩ではこんな言い伝えがあった。 お山の向こうには怖ろしい「山んば」が住んでいるから、決してお山を越えないように…。 迷うこと・考えること・疑うこと。それらは人の心を食う「ヘソクイ虫」のせいである。
今日もひとりの侍が、娘の儀式を控え祈っていた。 「うれしいことじゃ、ありがたいことじゃ…!」
お殿様の姿は、誰も知らない。
― この物語は果たして[ 昔話 ]だろうか? それとも ―