男は今日も酒を飲んでいた。
朝から晩まで一日中、酩酊してフラフラになってもまだ飲んでいた。
やめたくてもやめられない。だが、飲んでしまう。
誰か助けてくれ、誰か俺を止めてくれ──。
目覚めてみると、辺りはアル中の人間だらけだった。
隣にいるのはアル中、あっちもアル中、こっちもアル中。
ぶち込まれたのは、精神病院のアルコール病棟だった。
84日間の入院を経て、更生プログラムに取り組むという。
治療方法はたったひとつ。酒を、死ぬまで一滴も飲まないこと。
ここでは社会に戻ってまっとうに生きていこうとする者や、
自暴自棄になる者、どうにか病棟を抜け出して酒を飲んでやろうともくろむ者など、いろんな人間たちがひしめき合っている。
みんな酒で失敗して、信用を失い、自分はまともな人間じゃないと思っている。
けれど本当は……誰もがちゃんと生きたかった。
家族や友達や恋人と、幸せな人生を過ごしていきたいと思っていた。
ある日、そんな俺たちのもとに、
ひとりの新患が、病棟にあってはならないはずの酒を持ち込みやがった……。
日本全国には推定80万人のアルコール依存症者がいると言われています。
お酒をたしなむ貴方が、「明日から一生酒を口にしてはいけません」
と言われたら……やめられますか?
『ブラックアウト』は、作者自身がアルコール依存症であるという経験をもとに、リアルで滑稽な、けれど、どこか憎めない人物が織りなす物語をお届けします。
【門真国際映画祭2021舞台映像部門 受賞作品】
最優秀作品賞「ブラックアウト」
優秀主演男優賞/ 谷仲恵輔
優秀助演男優賞/ 今井勝法