「アンシャベルの花が咲いていた。これは俺の見つめる最後の景色か。
つぼみから咲いたばかりの花が燃えていく。燃えて溶けて灰となって消えていく。」
一人の少年の下に、めふぃすと・ふぇれすがやってきた。
全てを与えると言うめふぃすと・ふぇれすに少年はうそぶく。
「この腕も骨もそうして懐のこのボールも、全て盗んできた。
欲しいものは盗む。メフィストフェレスなんて必要ない。」
しかし少年はある日気がつく。思い出のボールをしまっている懐、
そこにあるはずのあばら骨が一本ないことに。
少年もまた誰かに盗まれていたのだ。
なくした身体を求める旅へ。そうしてそれは夢の彼方へ。
そうしてそれはかつて一度だけ盗まれた甲子園の優勝旗へ。
炎天下にさらされた「飢え」と「渇き」の中で
夢とも現実ともつかぬイメージの連鎖が、「息」が「視線」が駆け巡る。
俺を忘れてくれるな、と。