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有料 父が燃えない

カテゴリー ドラマ, コメディ,

劇団名 箱庭円舞曲

公演時期 2018/09/27

地域 関東

キャスト
白勢未生/相馬圭祐/林和義(VAICE★)/小暮智美(青年座)/安川まり/片桐はづき/井上裕朗(DULL-COLOREDPOP)/小山貴司/秋本雄基(アナログスイッチ)/古川貴義

スタッフ
原作・脚本・演出:古川貴義/舞台美術:稲田美智子/照明:南香織(LICHT-ER)/照明操作:溝尾夕香/音響:岡田悠/舞台監督:鳥養友美/衣装:中西瑞美/音楽:monologue/記録写真:鏡田伸幸・友澤綾乃/アナウンス:津留崎夏子(ブルドッキングヘッドロック)/制作:松本悠(青春事情)/企画製作:箱庭円舞曲


あらすじ

【-outline- あらすじ】
現代、会津若松市の火葬場、待合室。
市営の火葬場は市街地から離れた辺鄙な場所にあり、訪れる人が居なければ職員も出てこない。
よく言えば静謐な空間である。人の出す音よりも、虫や風の音の方が姦しい。

遺体が燃え尽きるのを待つ人々は、故人の思い出を問わず語りに語り合う。一体どんな人間だったのか、何をして、何をしなかったのか。父母や親族との関係、友人との交流、家族との珍事。故人がどういう人間だったかを、それぞれが勝手に語り尽くす。語っても語っても出てくる、出てくる、また戻る、同じ話が繰り返される、捉え方が人によって微妙に違っている、でも答えは分からない、故人しか分からない。同じとき、同じ場所で、同じ時空を共有していたはずなのに。あの人はあの日、何を考えていたんだろう。

遺された私たちには、想像することしかできない。

【Introduction】
自分のことを書こうと思ったら、他人の話ばかりになってしまう。毎回そうなのだ。箱庭円舞曲の台本を書くときは、自分の内側にある、現代社会の中で生きていくために発生する、切実なわだかまりを描こうとする。誰かとの軋轢、誰かとの齟齬、誰かとの不和、摩擦、確執、対立、葛藤。自分を描くためには、常に誰かが必要になる。それは、そうなのだ。自分が自分であるということは、自分だけでは担保できない。あなたがあなたであることを認めてくれるのは、あなた以外の誰かなのである。回りに誰かがいるから、あなたはあなたでいられる。だから、必死で自分のことを書こうと思っても、他人の話にばかりなってしまっていた。
そういうことなのだろう。

ならば。私を、私として最初に認めてくれたのは、誰なのだろう? 両親のどちらかである可能性が高い。生まれてきた瞬間を見た、ということであれば、母よりも助産師や医師が先になってしまう。それでは味気ない。では命名してくれた瞬間だとしたらどうだろう。私の名前を付けてくれたのは、父だ。あの父のことだから、私がまだ母の胎内にいるうちに、考えに考えて決めてくれていたはずだ。祖父の名前から一文字受け継いでいた父は、同じ一文字を私にも受け継がせた。私も子を持つことになったら、その一文字を引き継ごうと思ったこともあったが、やめた。一文字あろうがなかろうが、家族は家族、血縁は血縁だ。

そんな風にして、父の話になった。父は、福島県耶麻郡磐梯町大字更科字大曲で生まれ育った。1950年8月4日に生まれ、2017年12月29日に死んだ。享年68歳。友人も多く親戚づきあいもまめだった父の葬儀には、たくさんの人が訪れ、香をあげてくれた。一介の地方公務員の葬式にしては、盛大だったと思う。長くはないかもしれないが、濃い生涯だったのではないだろうか。若かりし頃は宮沢賢治に憧れ、詩作を志し、芝居にも片足突っ込んでいたらしい。自分が演劇なんぞを始めてから、叔父から聞かされた。驚いた。我がことを我が子に語らない父だった。戒名は「堅峰直英清居士」になった。私に引き継がれた一文字は、含まれていない。

一度、父の話を書いたことがある。2011年9月に、日本劇団協議会主催で上演していただいた『父が燃える日』という作品である。還暦を迎える父を労おうと、子供たち三人で家族旅行を計画し訪れた旅館での、数日間の物語だ。もちろんフィクションだが、前年の夏、父を実際に還暦旅行に連れ出しており、「もしもあの時、実はこうだったら?」「もしもあの時、こうなっていたら?」と妄想を膨らませながら書き上げた記憶がある。この公演は、あまり私の芝居を観に来なかった父が、珍しく観に来てくれた。自作を観てもらったのは、10年ぶりくらいだったと思う。観終わっての感想は、ほとんどなかった。こちらも恥ずかしくて照れ臭くて、ちゃんと聞こうとしなかった。聞きたくても聞けない今となっては、後悔するほかない。父は、あの作品のことをどう思っていたのだろうか。父は、私のことをどう思っていたのだろうか。

私を人間として最初に認めてくれた彼を燃やしながら、こんなことばかり考えている。人間は、なかなか燃えてくれないものだ。

箱庭円舞曲 代表 古川貴義

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プレビュー

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